忘備録

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アイドルマスターシンデレラガールズ 25話 感想

美城常務目線がどう見て取れたかが1番最初に感想として出てきた。
Pとの駆け引き、ライブ中の現場を歩きまわる時には立ち位置が定まらない感じと、会社に戻ってからの専務になっていく流れだったり、その両者の関係性をPとの会話で示し合うシーンに関しては明確に持ち場の適正が存在している描写がされていて、その落ち着いくべき所に行き着いたと思える話だった。
このPと美城常務、2人の立ち位置を明確に際立たせるストーリーと見るのが2期の中心だったのではないかと思う。
「私は城を、君は灰かぶりの夢を第一と考えている」という会話にあるように、アイドルの輝きを増すという方向と会社を守る方向で持ち場に関してきっちり分けられたのは安心できた。
クローネの秋フェス等としても常務の仕事とは到底思えない課題に対しての優劣をつける話になっていたので、無理に現場に行かなくていいという印象も事前にありつつの流れもあっての展開。
25話において美城常務は何というか文化祭で居場所のない人っぽい感覚を受けてしまう。
そのように受けとれる会場内の立振舞いは後に書くのだけれど、これはなりたくてもなれなかったアイドル、諦めて舞台に立つという所へとたどり着かなかったアイドルの残滓という部分がある気がする。
それをカバーする経営面的な手腕に繋がる所を後のシーンで見せても範囲外の話でない気がするが、昇格のワンシーン以外にもあっても良かったかなと。
しかしPがプロデューサーとしての路線を発露することですらギリギリだったので、会社員組に割ける尺はこれが限界にも映る。
最終的には美城常務が少しそういう部分を残す行動として描かれており、部長に諭されて行動を起こす理由としても正確かなと、部長は最後まで含みのある存在のままであって、その理由が示されてもよかったとも。
Pとの観念的な会話のやり取りの尖りっぷりに関しては作中で特筆するべき話だったと思う。
ライブに関しては複数箇所、NGの新曲、CPの曲とあって、ダンス云々と過去回想との組み合わせに関しては思う所はあるが、新楽曲があったりして、楽曲方面に関しては純粋に楽しめたし、感想としてももっと細かく書く人がいると思えるので割愛。

・美城常務の視点とPの論理

部長「今は君もライブを楽しんでみたらどうだね?」
常務「私はアイドル事業部統括重役です、遊びでここに来ているわけではありません」
部長「では現場の視察をしてみてはどうかね? 現場の責任者は彼なのだから、助言でもしてあげたらどうだい?」

こういう部長のけしかけをしないと動かない所だったり、現場のライブ会場を右往左往してる美城常務はまさに「星を見上げる場所」に立つことの場違いであり、その空気に憧れを持っている存在として描いてた。
視察ということで現場に足を運んでるけど、あれは自分の目から見るとステージで輝いているアイドルになりたがってる人にしか見えない印象を受ける。
これがどうしてもギリギリのラインで僻みにしない程度にして、常務自身の感性を映像として保護してあるけど、部長の発言
「では現場の視察をしてみてはどうかね? 現場の責任者は彼なのだから、助言でもしてあげたらどうだい?」
を取り払って考えてみると、やっぱりそういうステージに立ちたいけど立てなかった存在であり、そんな舞台を遠くから見つめてるのを表してるシーンだと思う。
例えば視察でいろんなステージを見ている間には観客としてなら「すごい」と思うような表情だったり、はっきりと社会人として良いか悪いかを判断するつまらなそうな視線でもいいのに、美城常務はあの舞台のアイドルに向けてる憧れを捨てきれていない人として描いてる気がしてならない。
いざ、この「視察」って行為を常務だけの論理でやっていたとしたら、きらめいてる舞台に憧れているものの、あえてそれを捨ててお城の上階、高い目線にいることで自分を保たせているキャラクターって解釈が通りやすいんじゃないか。


P 「お疲れ様です」
常務「これほど大規模になるとはな」
  「多くの部署と協力出来ましたので。常務のプロジェクトクローネとも」
常務「才能あるものは評価する、前にも言ったはずだ。だが君の考えは気に入らない」
  「私は以前、君のパワーオブスマイルをお伽話といった」
  「だか撤回しよう、お伽話にすらなっていない」
P 「それは…?」
常務「ある所に一人の少女がいたとしよう、何の取り柄もない不遇の灰かぶり」
  「少女は憧れる、綺麗なドレス、きらびやかな舞踏会」
  「優しい王子に手を引かれ、ともに美しい城の階段を登ることを」
  
  「物語には目指すべき目標が必要だ、みなが憧れる光り輝く目標」
  「だからこそ城は気高く美しく、そこに立つ者達はそれにふさわしい輝きを持つ者でなくてはならない」
  「君のような輝きを失ったものまで守ろうとするやり方では、やがて城の威厳は失墜し、廃れていくだろう」
P 「城を目指す少女は、何かを願うものです」
  「思いの形はそれぞれに違う、その全てが星のように大切な輝きだと私は思います」
常務「星…君はその星全てを見い出せるというのか?」
P 「いいえ、私に見えて常務に見えない事もあれば、その逆もあります」
  「渋谷さんとアナスタシアさんの別の可能性を常務が示されたように」
  「部署という枠に囚われていた私が思いもよらなかった可能性です」
  「触発された他のメンバーたちもそれぞれの可能性を広げ、輝きを増しています」
  「そして、それも無限にある彼女たちの可能性にある一つにすぎないのではないのかと」
常務「私の理想もその一つに過ぎないというのか?」
P 「一番大切なのは、彼女たちが笑顔であるかどうか」
  「それが私のプロデュースです。」
常務「君とは噛み合わないな。私は城を、君は灰かぶりの夢を第一と考えている」
  「我々は平行線のままだ」
ちひろ「プロデューサーさん、そろそろCPのステージです」
P 「失礼します」
常務「彼女たちは我々の平行線すらも越えていくのか」
P 「はい」

ここで、視線をそむけてもの悲しいと思わせる目線をくべる
解釈としてはアイドル自身に対して美城常務が行っているプロデュースも、Pのやっているプロデュースも本人たちには直接通じてない、伸びるための一つの可能性にすぎないとPに釘を差されてしまい、なおかつそうであることに対しての躊躇いのない存在と自覚しているPに対して、自身の遅れを取っている負い目に近い感情と受けとれた。

その後のライブ会場にいる美城常務とそれを見つける部長

部長「ここで見ていたんだね」
常務「たまには城から出て星を見上げるのも悪く無いと思ったものですから」

この段階で美城常務は以前まで否定的だった考えを変化させている、美学の一辺倒でないある程度方針の違う存在を受容する部分を手に入れたという作中の扱いになったように思える。


そしてこの視点を手に入れたことでラストのシーンにおいて

美城専務「資料は届けてくれたか」
ちひろ「はい、専務」

と、いう形で物語上において美城常務自身も一つ進歩したというストーリー展開。
このアニメにおいてはPと常務もお互いの影響の元に成長していく要素・展開を取り入れてて、それがPとの会話と駆け引きとお互いにおける立場の把握だったのではないかという感想。
常務の人間性に関してはラストで成長譚へと落とし込めてたと感じるし、このアニメにおいてキーキャラクターだったと思える。

Pの方針「笑顔」という言葉は繰り返す回数が多く、更にその単語の意味と過去回の側面が存在する故にどこか一定な調子になる印象を受けるが、そこを紆余曲折あってP側としてやり通す話であるのでそう受け取るべきものだろうか。
常務とのこういった変化への受容を促す会話からもアイドル達の可能性が拡大して、プロデュースしている側の規定や想定していた枠すら超えていく話、そしてそれを是として受けとるための理解のステージを生み出す話の展開だったと。
全体像としてはそんなイメージを持った。

・過去の常務について

「ある所に一人の少女がいたとしよう、何の取り柄もない不遇の灰かぶり」
「少女は憧れる、綺麗なドレス、きらびやかな舞踏会」
「優しい王子に手を引かれ、ともに美しい城の階段を登ることを」

この場面、走りだす卯月から始まってNGやアイドルのシーンが同時に流れる、しかし言葉は常務から出てくる。
あえて映像と切り離して会話にある少女を美城常務自身と当てはめる。
美城常務は過去にアイドルになる憧れを持ちつつも、その夢を諦めた者として卯月と同じ位置にいながらアイドルになれなかった選択をした存在という解釈もできる。
そうするとこのPに対してのプロデュース手腕は認めても、過去の自分と重ねあわせるが故に「諦めた」という選択をした自分を肯定せざるを得ない。
だからお伽話になっていなく、過去に現実で起きた話という事になる。
その為にPのやり方を認められないというスタンスを取りつつ、その成功結果が出ている現実に対しては動揺するように目線をそむける理由になる。

「君のような輝きを失ったものまで守ろうとするやり方では、やがて城の威厳は失墜し、廃れていくだろう」

これは過去の自分ではなりたくても不可能だった「憧れを生み出す存在」として、もしかしたらP自身のプロデュースによって己を預けられたならばアイドルに成っていた、成功していたのではないかと、そんな過去の届かない願いを現在のアイドルとPに常務自身の過去の感情を思い返させて、それを委ねる告白の話だったのかもしれない。
城にいるアイドルの人物像として絶対的な存在であることを求めるというのは、過去に憧れをもって、そして現在も憧れだけを持ちつづけた結果の到達点。
そういう動機を持っていたとしても不自然ではなく、そこに対して光がなくともアイドルを導く存在としてのPは美城常務の瞳からどのように映ったのかを理解する話でもあったと思う。

「君とは噛み合わないな。私は城を、君は灰かぶりの夢を第一と考えている」
「我々は平行線のままだ」

常務自身は過去の自分の話を含めてこの会話をしていた、しかしPはそのことに気付いているのかいないのか明確にせず、アイドルをプロデュースする方針に対しての返答をする。
そして会話の最後に見せた表情。

あの会話の中でアイドルに憧れだけをもって、そして諦めた存在が確実にいるという部分を示す面がある。
その中身としては全員をアイドルとして支援やプロデュースは出来ないだろうと言う暗にテーマ的な意味でもシンデレラガールズにおける問題点に踏み込んでる会話にもなる。
美城常務はライバル役のプロデューサーでもあり、待つことの出来ない時間経過を表す時計の針の役割でもあり、そして立とうと思っても立てなかったアイドル達の代弁者にも感じる。

こんな部分を想像する事があったから、この25話にあるシーンややり取りの中で一段と印象に残ったのかもしれない。